分母を分けて考えよう
今回は、シグマを使った問題の中で、分数が含まれているものを解説します。
特に、シグマの問題における分数は、分母がやたらと長いものが多いのです。たとえばこんな感じ。
\(\displaystyle \sum_{k=1}^{n} \frac{1}{(2k-1)(2k+1)}\)
\(\displaystyle \sum_{k=1}^{n} \frac{1}{k(k+1)(k+2)}\)
大抵、シグマの公式に当てはめて考えられないか、と最初に思いつきますが、今回はどの公式も使えません。
かと言って、\(1\) から順番に数字を代入していく? やってみるとわかりますが、具体数から規則性を見つけるのはほぼ不可能です。
こういう時に役に立つ考え方が、タイトルにもある部分分数分解です。これは、分母が多すぎるので、 \(2\) つの分数、もしくは \(3\) つの分数などに分けて(部分的な分数に分けて)考えてみる、というものなのです。
実際に、上記の問題を使ってやり方を具体的に説明していきます。
部分分数分解を用いたシグマの計算(問題)
正の整数 \(n\) に対して、次の \(S_{n}\) を求めなさい。
( \(1\) ) \(\displaystyle\sum_{k=1}^n \frac{1}{(2k-1)(2k+1)}\)
( \(2\) )\(\displaystyle \sum_{k=1}^{n} \frac{1}{k(k+1)(k+2)}\)
部分分数分解を用いたシグマの計算(答案の例)
( \(1\) )
\(S_{n}=\displaystyle \sum_{k=1}^{n} \frac{1}{(2k-1)(2k+1)}\)
\(=\displaystyle \sum_{k=1}^{n} \frac{1}{2} \Big(\frac{1}{2k-1}-\frac{1}{2k+1}\Big)\)
\(=\displaystyle \frac{1}{2} \displaystyle\sum_{k=1}^{n} \Big(\frac{1}{2k-1}-\frac{1}{2k+1}\Big)\)
\(=\displaystyle \frac{1}{2}\bigg\{\Big(1-\frac{1}{3}\Big)+\Big(\frac{1}{3}-\frac{1}{5}\Big)+\Big(\frac{1}{5}-\frac{1}{7}\Big)+\cdots+\Big(\frac{1}{2(n-1)-1}-\frac{1}{2(n-1)+1}\Big)+\Big(\frac{1}{2n-1}-\frac{1}{2n+1}\Big)\bigg\}\)
\(=\displaystyle \frac{1}{2}\bigg\{1-\frac{1}{2n+1}\bigg\}\)
\(=\displaystyle \frac{1}{2}\bigg\{\frac{2n+1}{2n+1}-\frac{1}{2n+1}\bigg\}\)
\(=\displaystyle \frac{1}{2} \times \frac{2n}{2n+1}\)
\(=\displaystyle \frac{n}{2n+1}\)
( \(2\) )
\(S_{n}=\displaystyle \sum_{k=1}^{n} \frac{1}{k(k+1)(k+2)}\)
\(=\displaystyle \sum_{k=1}^{n} \frac{1}{2} \Big(\frac{1}{k(k+1)}-\frac{1}{(k+1)(k+2)}\Big)\)
\(=\displaystyle \frac{1}{2} \displaystyle\sum_{k=1}^{n}\Big(\frac{1}{k(k+1)}-\frac{1}{(k+1)(k+2)}\Big)\)
\(=\displaystyle \frac{1}{2}\bigg\{\Big(\frac{1}{1 \cdot 2}-\frac{1}{2 \cdot 3}\Big)+\Big(\frac{1}{2 \cdot 3}-\frac{1}{3 \cdot 4}\Big)+\Big(\frac{1}{3 \cdot 4}-\frac{1}{4 \cdot 5}\Big)+\)
\(\displaystyle \cdots+\Big(\frac{1}{(n-1) \cdot n}-\frac{1}{n \cdot (n+1)}\Big)+\Big(\frac{1}{n \cdot (n+1)}-\frac{1}{(n+1) \cdot (n+2)}\Big)\bigg\}\)
\(=\displaystyle \frac{1}{2}\bigg\{\frac{1}{1 \cdot 2}-\frac{1}{(n+1)(n+2)}\bigg\}\)
\(=\displaystyle \frac{1}{2}\bigg\{\frac{1}{2}-\frac{1}{(n+1)(n+2)}\bigg\}\)
\(=\displaystyle \frac{1}{2}\bigg\{\frac{(n+1)(n+2)}{2(n+1)(n+2)}-\frac{2}{2(n+1)(n+2)}\bigg\}\)
\(=\displaystyle \frac{1}{2}\bigg\{\frac{n^2+3n+2}{2(n+1)(n+2)}-\frac{2}{2(n+1)(n+2)}\bigg\}\)
\(=\displaystyle \frac{1}{2} \times \frac{n^2+3n}{2(n+1)(n+2)}\)
\(=\displaystyle \frac{n^2+3n}{4(n+1)(n+2)}\)
部分分数分解を用いたシグマの計算(解説)
( \(1\) )
まずは、\(\displaystyle \frac{1}{(2k-1)(2k+1)}\) を \(\displaystyle \frac{1}{2} \Big(\frac{1}{2k-1}-\frac{1}{2k+1}\Big)\) に分解したところから解説スタートです。
分母の \((2k-1)(2k+1)\) を \(2k-1\) と \(2k+1\) に分解して、分数を \(2\) つにしていますね。これが部分分数分解というものなのです。これを行う上で、覚えておいてほしい注意点が \(2\) つあります。
① 通分したときに元の式に戻るように、何かの数をかけて調整する
② 分解した分数同士はひき算の形にする
①については、
\(\displaystyle \frac{1}{(2k-1)(2k+1)}=\frac{1}{2} \Big(\frac{1}{2k-1}-\frac{1}{2k+1}\Big)\)
という変形の \(\displaystyle \frac{1}{2}\) という部分を見ていただけるとわかるかと思います。
「これはどこから出てきたの?」
仮に、\(\displaystyle \frac{1}{(2k-1)(2k+1)}\) を \(\displaystyle \frac{1}{2k-1}-\frac{1}{2k+1}\) と分解してみたとしましょう。
イコールでつながれているのですから、全く同じ値になっていなければいけません。変形後の分数同士の引き算を通分してみると、
\(\displaystyle \frac{1}{2k-1}-\frac{1}{2k+1}\)
\(=\displaystyle \frac{2k+1}{(2k-1)(2k+1)}-\frac{2k-1}{(2k-1)(2k+1)}\)
\(=\displaystyle \frac{2k+1-(2k-1)}{(2k-1)(2k+1)}\)
\(=\displaystyle \frac{2k+1-2k+1}{(2k-1)(2k+1)}\)
\(=\displaystyle \frac{2}{(2k-1)(2k+1)}\)
という結果になります。
見た目が元の式の \(\displaystyle \frac{1}{(2k-1)(2k+1)}\) と違い、分子に \(2\) がついてしまっています。というわけで、元の式と同じにするために、 \(\displaystyle \frac{1}{2}\) をかけて調整したのです。
次に②ですが、分解しようとしたとき、
「別に足し算の形で分解してもいいんじゃないの?」
と思う人、いるのではないでしょうか? 引き算よりも足し算のほうが扱いやすいですからね、当然の発想だと思います。引き算にする理由は、互いに打ち消しあえるものが出てくるからなのです。
解答例の途中式を見てみると、
\(\displaystyle \frac{1}{2}\bigg\{\Big(1-\frac{1}{3}\Big)+\Big(\frac{1}{3}-\frac{1}{5}\Big)+\Big(\frac{1}{5}-\frac{1}{7}\Big)+\cdots\)
という部分がそうです。引き算の式がシグマによって足されていますね。
そうすると、たとえば
\(\displaystyle \frac{1}{2}\bigg\{\Big(1-\cancel{\frac{1}{3}}\Big)+\Big(\cancel{\frac{1}{3}}-\frac{1}{5}\Big)+\Big(\frac{1}{5}-\frac{1}{7}\Big)+\cdots\)
などのように、 \(\displaystyle -\frac{1}{3}\) と \(\displaystyle +\frac{1}{3}\) が消去されますね。
同じようにこれらを繰り返していくと、どんどん数が消去されていき、最終的にはほんの少ししか項が残らないということになります。これが②の意図なのです。
あと残るであろう代表的な疑問はおそらく、
「消去された結果が何で\(\displaystyle \frac{1}{2}\bigg\{1-\frac{1}{2n+1}\bigg\}\)なの?」
というところでしょうか。
\(n\) 番目まで足してしまうとイメージしにくいので、具体的に \(2\) 番目まで足した場合から考えてみましょう。
\(2\) 番目まで足すと、
\(\displaystyle \frac{1}{2}\bigg\{\Big(1-\frac{1}{3}\Big)+\Big(\frac{1}{3}-\frac{1}{5}\Big)\bigg\}\)
となり、先ほどのように \(\displaystyle \frac{1}{3}\) の部分を消去しようとすると、
\(\displaystyle \frac{1}{2}\bigg\{\Big(1-\cancel{\frac{1}{3}}\Big)+\Big(\cancel{\frac{1}{3}}-\frac{1}{5}\Big)\bigg\}\)
となります。
次に、\(3\) 番目まで足してみると、 \(\displaystyle \frac{1}{5}\) も消去されるので、
\(\displaystyle \frac{1}{2}\bigg\{\Big(1-\cancel{\frac{1}{3}}\Big)+\Big(\cancel{\frac{1}{3}}-\cancel{\frac{1}{5}}\Big)+\Big(\cancel{\frac{1}{5}}-\frac{1}{7}\Big)\bigg\}\)
となります。
\(4\) 番目までだと、
\(\displaystyle \frac{1}{2}\bigg\{\Big(1-\cancel{\frac{1}{3}}\Big)+\Big(\cancel{\frac{1}{3}}-\cancel{\frac{1}{5}}\Big)+\Big(\cancel{\frac{1}{5}}-\cancel{\frac{1}{7}}\Big)+\Big(\cancel{\frac{1}{7}}-\frac{1}{9}\Big)\bigg\}\)
となります。
規則が見えてきますでしょうか?
そうなのです、一番最初と一番最後だけが残るのです。これを \(n\) 番目まで足していくと、
\(\displaystyle \frac{1}{2}\bigg\{\Big(1-\cancel{\frac{1}{3}}\Big)+\Big(\cancel{\frac{1}{3}}-\cancel{\frac{1}{5}}\Big)+\Big(\cancel{\frac{1}{5}}-\cancel{\frac{1}{7}}\Big)+\cdots+\Big(\cancel{\frac{1}{2n-3}}-\cancel{\frac{1}{2n-1}}\Big)+\Big(\cancel{\frac{1}{2n-1}}-\frac{1}{2n+1}\Big)\bigg\}\)
となり、
\(\displaystyle \frac{1}{2}\bigg\{1-\frac{1}{2n+1}\bigg\}\)
しか残らないというわけですね。
すべての問題が最初と最後だけ残るというわけではないので、そこだけ注意ですよ。問題によって残る項の規則が違ってきますので、具体数から規則性を見つけてみましょう。
あとはかっこの中を通分で整理して、\(\displaystyle \frac{1}{2}\) をかければ答えにたどり着きます。
「うまく解けるように式を変形する」
頻繁に数学で出てくる考え方ですね。
( \(2\) )
まずはやはり、\(\displaystyle \frac{1}{2} \Big(\frac{1}{k(k+1)}-\frac{1}{(k+1)(k+2)}\Big)\)の部分でしょう。
「なんで \(k+1\) が \(2\) つあるの?」
なぜ部分分数分解をするのか。それは、シグマで足していったときにうまく項が消去されて、答えまでたどり着くからです。
ここで大事な考え方として、( \(1\) )での
\(\displaystyle \frac{1}{2}\bigg\{\Big(1-\cancel{\frac{1}{3}}\Big)+\Big(\cancel{\frac{1}{3}}-\frac{1}{5}\Big)\bigg\}\)
を見るとわかる通り、消去されるのは \(n\) 番目のかたまりの後ろと \(n+1\) 番目のかたまりの前の項になっていると思います。
※上記の例で言うと、 \(1\) 番目のかたまりの後ろ(\(1-\frac{1}{3}\)の\(\frac{1}{3}\))と \(2\) 番目のかたまりの前(\(\frac{1}{3}-\frac{1}{5}\)の\(\frac{1}{3}\))が消去されていますね。
今回の問題も、項が消去されるように \(2\) つの分数に分けようとすると、
\(\displaystyle \frac{1}{2} \Big(\frac{1}{k(k+1)}-\frac{1}{(k+1)(k+2)}\Big)\)
となるのです。言ってしまえば、こうすることでうまく項が消去されるので、都合がいいわけです。数学って、なんかずるいですよね。
「都合がいいように変形するなら、もはやどう変形してもいいのでは?」
こう感じる方もいると思いますが、ただ都合がいいように変形しているのではありません。ちゃんと元の式に戻るように変形を行っているのです。このルールを守らないと、式がおかしくなります。
数学は、正解を見つける教科ではなく、間違ったことをしないように考えていく教科なのです。都合がいいように変形しているが、間違った式変形ではない、という印象です。
さて、( \(2\) )の部分分数分解について、少し長くなりましたので、下記に一般的な書き方でまとめておきます。
分母の値の因数が \(3\) つの場合(それぞれ \(a,b,c\) とする)、
\(\displaystyle \frac{1}{abc} \Longrightarrow \Big(\frac{1}{ab}-\frac{1}{bc}\Big)\)
と変形すると、うまく場合が多い。
部分分数分解ができてしまえば、あとは( \(1\) )と同じ要領でどんどん項を消去していきましょう。
上記の答案の例に書かれている長い途中式を見るとわかる通り、符号が違うだけの項がたくさん出てきてますね。これらがすべて消え、今回も一番最初と一番最後が相変わらず残ってきます。
※ちなみに( \(1\) )でも述べたように、一番最初と一番最後が必ず残るとは限りませんので、毎回具体的に少し書き出してみて、残る項の位置を確認してみましょう。
最後に通分、\(\displaystyle \frac{1}{2}\) をかけるという作業で終了です。
高校数学での部分分数分解は、因数が \(2\) ~ \(3\) 個の式が分母に来るものが一般的です。今回の問題に慣れておけば、一般的なレベルの問題は同じように分解できると思います。(最後に残る項の位置は確認が必要ですよ。)
おわりに
さいごまで読んでいただきありがとうございました!
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数学に困っている方の一助になれれば幸いです。
ご連絡お待ちしております。



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