この記事を書いたのはこんな人

- 国立大学大学院数学科修了
- 元教員
- 統計検定準1級
- 数学検定準1級
- kaggler
この記事を書いたのはこんな人
yu-to☑️ 国立大学大学院数学科修了
☑️ 元教員
☑️ 数学検定準1級
☑️ 統計検定準1級
☑️ kaggler
はじめに
確率論や統計学において最も基本的かつ重要な分布のひとつが正規分布(ガウス分布)です。
自然界や社会現象の多くが正規分布で近似できることから、その数学的性質を正確に理解することは非常に重要です。特に、確率密度関数(pdf)が全範囲で積分すると 1 になる、すなわち「確率として正規化されている」ことの証明は、確率論の根幹を支える基本命題の一つです。
本稿では、ガウス積分を用いて、正規分布の確率密度関数が全実数範囲で積分すると 1 になることを、途中式を丁寧に追いながら示します。
目標と準備
平均 \(\mu\)、分散 \(\sigma^2\) の正規分布の pdf は、
\(f(x)=\displaystyle\frac{1}{\sqrt{2\pi}\,\sigma}\exp\!\left(-\frac{(x-\mu)^2}{2\sigma^2}\right)\)
です。示したいのは、
\(\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty} f(x)\,dx=1\)
です。その核心は、
\(I:=\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty} e^{-x^2/2}\,dx=\sqrt{2\pi}\)
というガウス積分の評価にあります。これをまず導きます。
ガウス積分の評価
積分 \(I\) を直接は計算しにくいので、二乗して二重積分にします。
ここで極座標 \(x=r\cos\theta\), \(y=r\sin\theta\) を用いると、ヤコビアンは \(r\) なので
ヤコビアンについて
・座標変換の確認
直交座標 \((x, y)\) を極座標 \((r, \theta)\) に変換します。
\(x = r\cos\theta,\quad y = r\sin\theta\)
このとき、逆に
\(r = \displaystyle\sqrt{x^2 + y^2},\quad \theta = \tan^{-1}\!\left(\frac{y}{x}\right)\)
となります。
・変数変換とヤコビアンの定義
2変数の積分を変換するとき、次のように面積要素が変わります。
\(dx\,dy = \displaystyle\left|\frac{\partial(x, y)}{\partial(r, \theta)}\right|\,dr\,d\theta\)
右辺の係数 \(\displaystyle\left|\frac{\partial(x, y)}{\partial(r, \theta)}\right|\) がヤコビアンと呼ばれます。
・偏微分の計算
それぞれの偏導関数を求めます。
\(\begin{aligned}
\displaystyle\frac{\partial x}{\partial r} &= \cos\theta, & \frac{\partial x}{\partial \theta} &= -r\sin\theta,\\
\frac{\partial y}{\partial r} &= \sin\theta, & \frac{\partial y}{\partial \theta} &= r\cos\theta
\end{aligned}\)
したがって、ヤコビアン行列は、
\(J = \begin{pmatrix}
\cos\theta & -r\sin\theta \\
\sin\theta & r\cos\theta
\end{pmatrix}\)
・行列式(ヤコビアン)の計算
行列式をとります。
したがって、ヤコビアンの絶対値は \(r\) になります。
\(I^2=\displaystyle\int_{0}^{2\pi}\!\!\int_{0}^{\infty} e^{-r^2/2}\,r\,dr\,d\theta\)
内側の積分を、\(u=\tfrac{r^2}{2}\)(したがって \(du=r\,dr\))で置換すると、
\(\displaystyle\int_{0}^{\infty} e^{-r^2/2}\,r\,dr=\int_{0}^{\infty} e^{-u}\,du=1\)
よって、
\(I^2=\displaystyle\int_{0}^{2\pi} 1\,d\theta=2\pi \quad\Rightarrow\quad I=\sqrt{2\pi}\)
(被積分関数が正なので \(I>0\) より正の平方根をとります。)
一般の正規分布での積分
本題の積分を変数変換で標準形に落とします。
ここで、
\(z=\displaystyle\frac{x-\mu}{\sigma}\quad\Rightarrow\quad x=\mu+\sigma z,\; dx=\sigma\,dz\)
とおくと、積分範囲は \(x : -\infty\to\infty\) に対し \(z:\,-\infty\to\infty\) のまま変わりません。
したがって、
よって、「正規分布は、確率の和(または積分)が1になるように定義されている」ことがわかりました。
おわりに
さいごまで読んでいただきありがとうございました!
- 大学受験数学で困っている方
- 公務員試験の数学で困っている方
- 統計学(統計検定)の勉強で困っている方
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私自身、数学に関して順風満帆に理解できてきたわけではありませんでした。
周りを見渡せば数学の天才がゴロゴロいて、そんな人たちに比べれば私は足元にも及びませんでした。
だからこそ、わからない、理解できない方の気持ちを少しはわかってあげられると自負しております。
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