二項分布 \(B(n\), \(p)\)
\(1\) 回の試行で事象 \(A\) の起こる確率が \(p\) のとき、この試行を \(n\) 回行う反復試行において、\(A\) の起こる回数を \(X\) とすると、\(X=r\) になる確率は
\(P(X=r)={}_nC_r p^r q^{n-r}\)
(\(r=0\), \(1\), \(\cdots\), \(n\);\(0<p<1\), \(q=1-p\))
このとき、確率変数 \(X\) は二項分布 \(B(n\), \(p)\) に従うという。
二項分布の平均、分散
今回は二項分布の平均、分散についての問題です!
確率変数 \(X\) が二項分布 \(B(n\), \(p)\) に従うとき、
平均:\(E(X)=np\)
分散:\(V(X)=npq\)
標準偏差:\(\sigma(X)=\sqrt{npq}\) (\(q=1-p\))
(導入)
\(1\) 回の試行で事象 \(A\) の起こる確率を \(p\) とする。この試行を \(n\) 回繰り返すとき、第 \(k\) 回目の試行で \(A\) が起これば \(1\) 、起こらなければ \(0\) の値をとる確率変数を \(X_k\) とする。
このとき、\(k=1\), \(2\), \(\cdots\), \(n\) に対して
\(P(X_k=1)=p\):\(k\) 回目に \(A\) が起こる確率
\(P(X_k=0)=q\):\(k\) 回目に \(A\)が起こらない確率
(\(q=1-p\))
確率変数 \(X_k\) | 1 | 0 |
確率 | p | q |
よって \(E(X_k)=1\cdot p+0\cdot q=p\)
また \(E(X_k^2)=1^2\cdot p+0^2\cdot q=p\)
ゆえに \(V(X_k)=E(X_k^2)-\{E(X_k)\}^2\)
\(=p-p^2=p(1-p)=pq\)
\(X=X_1+X_2+\cdots +X_n\) とおくと、\(X\) も確率変数で、この \(X\) は \(n\) 回のうち \(A\) が起こる回数を示すから、二項分布 \(B(n\), \(p)\) に従う。
よって \(E(X)=E(X_1)+E(X_2)+\cdots +E(X_n)\)
\(=p+p+\cdots +p=np\)
また、確率変数 \(X_1\), \(X_2\), \(\cdots\), \(X_n\) は互いに独立であるから
\(V(X)=V(X_1)+V(X_2)+\cdots +V(X_n)\)
\(=pq+pq+\cdots +pq=npq\)
ゆえに \(\sigma(X)=\sqrt{V(X)}=\sqrt{npq}\)
二項分布の簡単な例を見ていきましょう。
例)\(1\) 個のさいころを \(5\) 回投げるとき、\(2\) の目が出る回数を \(X\) とすると、\(X\) のとりうる値は \(0\), \(1\), \(\cdots\), \(5\) で、
\(2\) の目が出る確率:\(\displaystyle\frac{1}{6}\)
\(2\) の目が出ない確率:\(\displaystyle\frac{5}{6}\)
より、確率は
\(P(X=r)={}_5C_r\big(\displaystyle\frac{1}{6}\big)^r\big(\frac{5}{6}\big)^{5-r}\) (\(r=0\), \(1\), \(\cdots\), \(5\))
よって、\(X\) は二項分布 \(B\big(5\), \(\displaystyle\frac{1}{6}\big)\) に従う。
二項分布の平均、分散(問題)
赤球 \(5\) 個、白球 \(3\) 個、青球 \(2\) 個の入っている箱から任意に \(1\) 個を取り出し、色を調べてもとに戻す試行を \(5\) 回繰り返す。このとき、赤球または白球が出る回数を \(X\) とする。確率変数 \(X\) の期待値、分散、標準偏差を求めよ。
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(指針①)
「\(1\) 個を取り出し、もとに戻す試行を \(5\) 回繰り返す」より
反復試行であることがわかるので、\(X\) は二項分布に従う。
よって使用する公式は、\(P(X=r)={}_nC_rp^rq^{n-r}\) \((q=1-p)\)
したがって、\(n\), \(p\), \(q\) を調べる。
(指針②)
二項分布 \(B(n\), \(p)\) → \(E(X)=np\), \(V(X)=npq\), \(\sigma(X)=\sqrt{npq}\)
(解説)
\(1\) 回の試行で赤球または白球が取り出される確率は、
\(\displaystyle\frac{8}{10}=\frac{4}{5}\) \((=p)\)
よって、\(X=r\) となる確率 \(P(X=r)\) は、
\(P(X=r)={}_5C_r \big(\displaystyle\frac{4}{5}\big)^r\big(\frac{1}{5}\big)^{5-r}\) (\(r=0\), \(1\), \(2\), \(\cdots\), \(5\))
したがって、\(X\) は二項分布 \(B\big(5,\) \(\displaystyle\frac{4}{5}\big)\) に従うから
\(E(X)=5\cdot \displaystyle\frac{4}{5}=5\)
\(X(X)=5\cdot\displaystyle\frac{4}{5}\cdot\frac{1}{5}=\frac{4}{5}\)
\(\sigma(X)=\sqrt{\displaystyle\frac{4}{5}}=\displaystyle\frac{2}{\sqrt{5}}\)
おわりに
さいごまで読んでいただきありがとうございました!
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私自身、数学が得意になれたのはただ運が良かったんだと思っています。たまたま親が通塾させることに積極的だったり、友達が入るって理由でそろばんに入れたり、他の科目が壊滅的だったおかげで数学が(相対的に)得意だと勘違いできたり。
”たまたま”得意になれたこの恩を、今数学の学習に困っている人に還元できたらなと思っています。お金は取りません。できる限り(何百人から連絡が来たら難しいかもですが…)真摯に向き合おうと思っていますのでオアシスだと思ってご連絡ください。